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概要

chiisanamachi

179が立体的に組み込まれていた。役場支所、派出所、郵便局、病院、小学校、中学校、幼稚園、神社、寺、公民館、老人クラブ、共同浴場、映画館、パチンコ店、居酒屋、食堂、商店街などがそなわっていた。周りを海に囲まれ、閉ざされた狭く厳しい環境の中に生まれ、育ち、働き、死んでいった人の人生は、どのようなものだったのだろうか。小さくても確かな幸せを感じながら懸命に生きていた人々の姿が、人影も映らない眼の奥にイメ-ジされていった。●忘れないでいたい「未来都市」あれから、もう30年以上が過ぎてしまった。あれ以来、軍艦島には踏み入れたことはない。長い歳月と風雨にさらされてきた建築群は、いま廃墟と化しているようだ。人間が造り人間が生きてきた空間が朽ちていく。かつて当時の最先端技術が惜しみなく投入された「未来都市」が廃墟となって失われていく※4。ほんの数時間であったが、明治・大正・昭和と、日本の近現代が凝縮された空間を体感した時のことを、忘れないでいたい。たくさんの人々の人生が奏でられた一つの宇宙が存在したことを。※4 2003年3月NPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」が設立され、署名活動、写真展・シンポジウム開催など展開している。代表の坂本道徳氏(51歳)は小学校6年の時、炭鉱マンだった父の転勤で移り住み、軍艦島で育った。