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概要

chiisanamachi

209道が通じたのは昭和30年の初め頃で、雪が多い1~3月はその道路は閉鎖され、まさに行き止まりの場所となる。「生きられた」とは、「生きることができた」という意味であり、別の見方をすれば「取り残された」とも表現できる。何に取り残されたのか。近代化の波、近代の技術・経済である。在原は標高368mから380mの緩やかな傾斜地に屋敷地が段状に造成され、北方の山から流れる豊かな水が生活と生産を支えてきた地域である。だから実は取り残されたのではなく、生活の営みの積み重ねの中で在原が在原として「生き続けてきた」といえるのである。●自由に配置された茅葺きの民家母屋、付属屋を含め20戸ほどが茅葺きの民家として生きられている。それらの民家は集落の中で自由に配置され、思い思いの母屋の向きが在原の民家群の特徴である。茅葺き民家群として有名な京都府美山町※2との差異がそこにある。美山町は母屋の棟方向が一定なため、それらが建ち並ぶ景観としての統一性が感じられるが、在原は棟方向がまちまちなため統一感としての美しさには及ばない。しかし変化に富んだおもしろさがある。一つの敷地ごとに、それぞれ異なる母屋の配置と棟の向きは、どのような理由からなのだろうか。屋根の棟方向と玄関の位置を表わした在原の※2 美山町北地区として平成5年12月8日、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。