ブックタイトルchiisanamachi

概要

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219おわりに歴史的なものを大切にするヨ－ロッパに比べて、日本人はいつのころからか、自分たちのまちに蓄積された大切なものをおろそかにする人種になってしまった。しかし、ここ20年くらいの間に少しづつだが、ほんとうに大切なものは何なのかが理解されてきているように思う。自然を愛で、自然とともに暮らし、めぐる季節を編みこみながら、積み重ねた日々の生活の営みの中から培われたまちや建築の大切さを、人々は感じはじめている。それは人々が自分らしい生き方をしたい心の顕われであるように、私には感じられる。人の心とまちの空間は密接につながっていると思うからである。固有の土地に根を張って生きられるまちの空間は、住み続ける人の心の記憶の中に、確実に沈潜していくのだ。それらの記憶が受け継がれることによって、空間の価値はさらに輝きを増していくのだと思う。23のちいさな町を訪ね歩いたこの物語は、そのように人々の心が、土地の中にひとつひとつ刻まれていることを確かめる旅でもあった。