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概要

chiisanamachi

29を重ねていた。1978(昭和53)年、本町通りの人々は次の5つの申し合わせ事項を確認することに至ったのである。1. 家は日本風に統一しましょう2. 家は溝から1mさげましょう3. 軒は溝までだしましょう4. 軒の高さをきめましょう5. ケバケバしい色はさけましょう本町通りは伝建地区を貫くものであり、地区選定と拡幅事業には相容れないところ※7があった。しかし歴史的都市に恥じない町の景観をつくりたいと、地域の人たちが協議を重ねてきたことの意義は大きい。歴史的景観や歴史的風土の重要性が京都・鎌倉・倉敷・萩などを中心として叫ばれてはいたが、現在のような大きな潮流にはなっていない時代のことである。四半世紀前に、小さな地方都市の片※7 本町通り拡幅事業は1976年から始まり、1983年に完了した。街路の拡幅で町並みは一変するが、建築のファサ-ドが真新しくなることによる変化と同時に、空間の感じ方の変容を重大なこととしてあげておきたい。つまり、D/H、街路の幅と建築物の高さの変化である。ヒュ-マンスケ-ルで程よく安心感があった街路空間が、建築の高さはそんなに変わらないのに、道路が広くなったことにより、両側の通りのつながりを感じなくなる空間に変わってしまうのである。両側の建築が有機的に連続し空間として把握できていたものが、人間の感覚としてスケ-ルを逸脱してしまっている。統一感のある景観形成がなされたとしても、空間スケ-ルの変化は取り戻しようのない大きな損失と言わざるを得ない。