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概要

chiisanamachi

51●下水道建設が立ち遅れた理由日本の下水道普及率は、平成14年度末で64%、静岡県は45.4%である。アメリカやヨ-ロッパの諸都市では、すでに19世紀末にほぼ100%の普及率なのに、21世紀の今日でさえこの数字とは、やはり遅れているといわざるを得ない。1824年、E・チャドウィックは労働者の健康という上下水道整備の必要性、下水道整備により土地の価値が上がり地主の利益にもつながることを述べた報告書※5をイギリス議会に提出した。イギリスでは、これが契機となり下水道の建設がはじめられた。パリはじめヨ-ロッパ諸都市でも下水道建設事業が開始され、伝染病の制圧・予防に大きな効果をあげたのである。都市における下水道は、家における屋根と同じように考えられたのである。日本の下水道立ち遅れの最大の原因は、伝染病に対する日本の医学の発展のあり方であったと、柴田徳衛氏は『現代都市論』※6の中で述べている。・医学の進歩と下水道整備との関係チャドウィック報告の通り欧米の諸都市は、下水道はじめ公衆衛生の改善が伝染病予防に効果があると認識されたが、日本の場合、公衆衛生学よりも細菌学が発展したことにより下水道整備に影響を及ぼしたのである。すなわち、19世紀末、ヨ-ロッパでは下水道の建設工事がほぼ完了したあとに細菌学が発展し、※5 『イギリスにおける労働者の衛生状態』と題したいわゆるチャドウィック報告書は、1839年から3年間にわたる医師たちの協力による詳しい調査の結果である。議会に提出された1842年の翌年、王立委員会が設置され、48年には公衆衛生法が施行され、各都市の都市計画事業の発端を画したと評価されている。※6 『現代都市論』第二版・1976(昭和51)年11月30日・東京大学出版会発行。柴田徳衛氏は1924年生まれ。東京大学経済学部卒。東京都立大学教授、東京都企画調整局長、東京都公害研究所長等を歴任。