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概要

chiisanamachi

52ワクチンにより直接個人的に伝染病をおさえることができるようになったのに対して、日本では、下水道を整備する前に、医学がそれを飛びこえて細菌学研究が主流を占め、直接個人の病原をワクチンでおさえるようになったのである。いかに都市の生活環境を整備して病人をつくらないですませるかという研究よりも、すでに病気になった患者をいかに個人的に治療するかという研究に重点が置かれていった。ときの明治政府も、多額の費用をかけて下水道建設をしなくても、伝染病患者を強制隔離し、個人的に予防注射ですませることが安上がりで済む、と考えたのであった。※7●電線が地中化されなかった理由松原隆一郎氏は『失われた景観』※8の中で、電線の地中化問題に言及している。ヨ-ロッパの諸都市では、電力供給が始まった時点ですでに都市の形態が成熟しており、そこに配電する場合には景観に配慮することに意識が向かい、当然のごとく地中化された。ただ景観保全を第一に考えて地中化されたかというと必ずしもそうではないらしい。・イギリスの地中化は経済競争の公正さロンドンでは、19世紀末に街灯を建てることが重要な公共事業であった。暗い街路は犯罪者の温床となるため治安維持が求められた。ところが街灯の建設において、ガスと電気の事業者が競合し※7 『現代都市論』第二版・1976(昭和51)年11月30日・東京大学出版会発行。柴田徳衛氏は1924年生まれ。東京大学経済学部卒。東京都立大学教授、東京都企画調整局長、東京都公害研究所長等を歴任。