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概要

chiisanamachi

82た宿をお頼みになった。すると筑波の神は“収穫感謝の夜ですが、親の神様をお泊めしないわけにはまいりません”と答え、ごちそうを作って謹んでお迎え申し上げた。祖先の神様は大変お喜びになり、筑波山を絶えず多くの人が登って歌をうたい、舞をおどり酒を飲んで楽しむ山にされた。片や富士山は雪が降っていて誰も登れない山になった 」※2常陸風土記の伝説は、筑波の人たちの郷土愛から生まれた話のように思われる。筑波山の南麓から、空気の澄んだよく晴れた朝に富士山が見える。どうみても筑波山より高く形も立派である。昔の人たちはそれを見て負けん気を起こしたのだろう。たとえ低くても筑波山の方がずっといい。木の実や草の実もたくさんあるし、第一登って遊ぶ楽しみがあるというわけだ。万葉集などにも多く詠まれ※3、古くから筑波山は広く関東において親しい愛着を人々の心に抱かせてきた。●男体・女体のふたつの峰筑波山の山塊が地中で形成されたのは、3億年も前のことで富士山よりずっと早い※4。1億2千万年前ころ、凝り固まった火山岩が地中から圧し上げられ、高くそびえた筑波山塊が姿を現わす。その表面は泥砂や貝殻、小砂利などが厚く覆いかぶさっていたが、長い間の風雨により崩れて流れ落ち、斑レイ岩や花崗岩といった硬質※2 『筑波山』木村繁・著 倫書房 1959年3月初版・1977年10月復刊※3 「筑波ねを よそのみ見つつ ありかねて 雪消の道を なづみ来るかも」 ―筑波山をよそ目に見るだけでは我慢ができなくなって、雪解け道を押しきって難儀しながら、とうとう頂上まで来たよ。「筑波ねの さゆるの花の 夜床にも かなしけ妹ぞ 昼もかなしけ」―筑波山の小さなユリのようにかわいい妻よ、夜床にも愛した妻よ、別れてみればさびしさ恋しさも、一層身にしみてならぬ。(巻20防人の歌)※4 富士山は今から3万5千年前に噴火がはじまり、それから2万5千年の間、噴火しつづけ激しく灰を降らせた。