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概要

chiisanamachi

89が、男体と女体の方向にあることは、偶然にも地形に合っていたという単純解ではなく、明らかに計画的意図があったと解するのが妥当であろう。さらに「筑波」には特筆すべき現象がある。●筑波山中腹の温暖域に計画普通、高度が上がれば気温は下がる。高度100mで約0.5℃だけ寒くなるから、高度300mの中腹の集落域は麓より1.5℃寒くなるはずだが、観測記録から午前6時の気温が1ヶ月のうち20日から25日は中腹が山裾より0.5℃から2℃も高くなっている。原因は熱の輻射だと考えられる。昼間は太陽熱で地面が温まり、それに接する空気も温度が上がる。暖かい空気は軽いので対流が起こり、地上300mくらいまでの空気は一様に暖かくなる。夜になると地面は熱を放出し、急速に冷える。冷たい空気は重いので風の弱い日には冷えた空気はそのまま山裾に留まっているが、高さ300mの空気は昼間の余熱で暖かいため中腹の気温が山裾より高いのである※7。筑波は江戸時代初期に計画的に意図され、つくられたまちである。道路形態にそれを見ることができるが、立地場所そのものにも中腹の温暖域に計画されたことを読み解くことができる。昔の人は科学的な根拠は理解できなくても、人間が住む最適な場所はわかっていたのである。※7 冬の夜明けの気温だけをみると、筑波山の中腹は静岡県南伊豆と同じくらい暖かい。だから中腹ではミカンが育つ。万葉集にも「たちばなの下吹く風の かぐわしき 筑波の山を恋いずあらめかも」と詠われている。たちばなはコウジミカンの古名だから、筑波山には昔からミカンが育っていたのである。気温の逆転層が現われるのは冬だけだから、中腹が夏に暑いということはない。夏涼しく冬暖かいことを昔の人は経験で知っていたのである。